趣味の事
「松本さん、趣味はなにかお持ちですか?」
仕事の合間の雑談でよくそう尋ねられる。
「趣味ねえ・・・」
返答にも、しばらく考え込まなければいけない。
「趣味ねえ・・・う~ん・・・・・・ないです・・」
今年は偶然にも同い年の方が三名、農作業のお手伝いに来ていただいた。
どの方も今年還暦を迎える年齢とは思えないくらい若々しくてとても元気だ。
「じゃあ、あなたの趣味は何ですか?」
「東京にいるときはゴルフやってました。今は英会話と朗読、習っています。」
「ほう~!」
「じゃあ、あなたは?」
「私はヨガ教室通っていますよ。それにガーデニング。植物はね、手をかけてやると正直に答えてくれるの。」
みなさん、ご自分の趣味を語るときは表情もいきいきとして話も弾む。
趣味について何も語れない私を見かねてか
「松本さんはみかんつくりが趣味ですよね。」と助け船をだしてくれたものの
「いや、いや、みかんつくりなんて苦痛そのものですよ。趣味なんてものじゃありません。」
自分の残された年月を考えた時、仕事一筋ではあまりにも寂しすぎる。
同い年の方たちの趣味の話を聞くたびに、自分も何か没頭できるものを持たなければ、そんな
思い、いや思いを通り越して焦りが募る。
そして同い年の方たち、きっとこれまで忙しかった自分に対するご褒美として、趣味を満喫される
時間をつくられているんだろうな、そんな想像をする。
若々しさと健康を維持する源、それはきっと趣味を持つことに違いない。
三年ほど前、はっきりもの言うおばさんが農作業のお手伝いに来た。
「松本さんはお酒も飲まれませんよね。」
「はい。」
「たばこも吸われませんね。」
「はい。」
「趣味もないですよね。」
「・・・はい・・・」
「・・・つまらない・・ひと・・・・」
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